Prune.

好きなことを好きなだけ。

2022-01-01から1年間の記事一覧

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ふと、昔に付き合っていた人のことを思い出すことがある。 その人のことを思い出すとき、僕の頭のなかには決して彼女の表情であるとか、体型とかそういうものが浮かんでくるわけではない。女の子にしては少し低めで優しげな声とか、しっかりしているように見…

【超短編エッセイ】他者であること、異なること

他者であることとは何だろうか。 電車で隣の席に座った人は他者である。マンションで隣に住んでいる人も他者であるに違いない。しかし、他者であるとは「異なること」を必ずしも意味しない。 そもそも私たちの遺伝子の99.9%は同じである。もちろん、そこに…

【超短編エッセイ】強さとそのユーフォリア

夢の記憶、愛の記憶、刹那の記憶が蘇る。すべてがリフレクションとして、過去からの連続性のなかで立ち上がってくる記憶だ。 夢のなかで笑顔を見せていた僕は、現実のなかで苦しさや、過失や、やるせなさを感じる。けれど、それですべてが終わってしまったわ…

【超短編小説】魔法のようなもの

魔法のようなものについて語ろう。 その部屋では、美しいスロービートの音楽が流れている。どことなく60年代を思わせるような優美な歌声と、ディズニー映画を思い起こさせるようなおとぎ話の音。 『もし僕らの言葉がウイスキーであったなら』というエッセイ…

【超短編小説】儚さの流動体

儚さが流動する、その乗り物(vehicle)としての「儚さの流動体」をあなたは目にする。それはある側面では、明るく輝かしいさまを見せ、もう一方の側面では暗くどろどろとした闇を覗かせる。 自己増殖的な悪意と、都市に浮遊する空気感のなかから抽出される意…

【超短編小説】湖と亡霊

深夜にうごめく亡霊たちの声がする。その声はポリフォニー。重なり合う。 ある霊は不平不満を、ある霊は失望を。そして一つの霊だけは、上等な褒め言葉を口にする。繋がり合ったり、離れたり、縺れたり、うごめく亡霊たちの姿は無邪気でありながら、シニカル…

【超短編エッセイ】While drinking, she asked "how has your day been?"

「ああ、そんなこと言ってたよね。」と彼女は僕に言う。 「そんなに考えてたなんて思ってなかった。だって君のいうことは真剣そうじゃなかったもん。そんなに真面目に悩んでたとは思わなかったから。」彼女はあっけらかんとそう言う。 そういう図太さ、臆せ…