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【超短編小説】儚さの流動体

儚さが流動する、その乗り物(vehicle)としての「儚さの流動体」をあなたは目にする。それはある側面では、明るく輝かしいさまを見せ、もう一方の側面では暗くどろどろとした闇を覗かせる。

自己増殖的な悪意と、都市に浮遊する空気感のなかから抽出される意思決定のシニフィエが混ざり合い、混沌とした―カオティックな―事実を目の前に引き起こす。

事実は、現実そのものであると同時に、まさにそれ自体が構築され、創造され、フォームを形作られた結果としてのものであること。社会構築主義か?などという問いは留保してほしい。ただ僕はそう思っただけなのだから。

僕はその乗り物に乗る。運転手はいない。それは自動運転であり、しかしながら主体とされる乗車する人の意思と価値観によって左へ、右へ、前へ、後ろへと縦横無尽に進む。そこに道はない。その乗り物はどこへだって行ける。そこには「場所」(places)はないからだ。あるのは「空間」(spaces)―まさにその物理的な移動可能性を規定する存在そのものだけなのだから。

儚さの流動体は進む。前進するのも、後進するのも進んでいることに変わりはない。それは円環する。前進することは後進することと、事実なにも変わらないのだ。

空っぽの精神性のなかに自己増殖するvirusのようなものを載せ、儚さの流動体は今日も都市を進む。