Prune.

好きなことを好きなだけ。

【短編小説】偽物と本物、あるいはその脱構築

偽られた顔を眺めて、本当のことは決してこの口から語られることなどないのだろうと思う。なぜなら、僕も嘘をついていて、結局のところはお互い様だったからだ。

「大したことはない」と彼は言う。僕はそんなふうに楽観的にはいられないんだ。本当は大したことだったのだと思う。けれど、大したことを何度も繰り返していくうちに、それは大したことではなくなってしまった。

おかしいことを繰り返していると、僕たちはそれが日常だと思ってしまい、おかしいことに気づけなくなる。偽りの顔が、平生の顔になる。なんて恐ろしいことだろう。

彼女は満面の笑みを見せる。その裏側に隠れたもの、極めて作為的に作られた満面の笑み、本当のことを語ることの難しさ、本当が本当でなくなってしまうことの厳しさ、ありとあらゆることがBad Reputationとして、僕には降り掛かってくる。

もうどうにもできない。処理落ちなのだ。

ポートレートの写真が歪む。本当に美しい人が、本当に汚く見えたりするのだとしたら、写真は結局のところ、本当のものなんて何一つ写し出していないのではないか。結局は認識というフィルターを通してしか、写真というマテリアルに接触することはできない。僕らは媒介されるものを何度も通過して、そのうちに歪んでいく。曇っていく。

信頼できるものは朽ちる。やっぱり処理落ちなのだ。

「大したことはない」と彼は繰り返す。そのうち、彼女も彼に同調するかのように「そうだよね。大したことなんてない。ない。」と呪文のように言い出すようになるのだ。

現実に現れる漫然とした不安。長雨の外を眺めるため窓を開けると、高い湿度が一気に襲ってきて僕たちはますます不安になってくる。

7月の憂鬱。

I can feel it and I know it's so strange and crazy but I also agree that I don't have to stop and cry for such a thing. There's no place to wait you and me.