Prune.

好きなことを好きなだけ。

【超短編エッセイ】La nuit―夜

たまっている下書き記事が大量にある。いずれ然るべきタイミングにアップすればよいのだけれども、然るべきタイミングとやらが来るのかどうかは分からない。

夜は深く、深海のなかにいるような気分になる。

美しい音楽が夜を彩れば、夜の部屋の灯りは少しで構わない。東欧を思わせるその音楽は、もう少し続けて聴くとアジア風にも思えるし、結局のところ無国籍音楽かもしれない。

消える。様々な音を構成する要素が、そして区分が。この文章についても、誰が書いているのか、どのようなことを書いているのか、何を伝えようとしているのか、ということが消える。意味がない。

雑音は最悪だ。街に出ると、雑音にあふれている。雑音の尊さを主張する人もいるだろう。街を構成する要素としての雑音。しかし、その雑音は僕を苛立たせ、あるいは、酷く疲れさせる。そのような経験を持つ人はわんさかいるだろう。

写真の中の人が微笑む。映像のなかの景色がリアルを超える。ノイズキャンセリングイヤホンがかき消す音。

画面は明るい。部屋は暗い。その妙なコントラストが、現実の隠されていた諸事実を表沙汰にしてしまう。忘れていたはずなのに、隠していたはずなのに、と舌打ちをする人が現れる。けれど、事実は深夜に明らかになってしまう。構造的に、しかも連続的に。

夜の街の静けさ、まばらな車のヘッドライト。しかし遠くの高速道路を進む多くのトラックの姿。見えないもの、今ここから見えないものが作り出す事実を考える。

今夜も続く。クラブハウスで、ワンルームの一室で、24時間営業のスーパーで。それぞれの夜。明らかな夜。繰り返す夜。