Prune.

好きなことを好きなだけ。

【短編小説】Matters of Concern

冷房をガンガンに効かせた部屋なのに、少しエアコンの風が弱くなると途端に暑く感じてしまう。暑がりは、外に出られないし、暑がりは、黙ってエアコンの効いた自宅で読書をしたり、音楽を聴いたりしている方が良い。

ただの霧みたいな、ただの雨みたいな、ただの風みたいな、瞬間が夜に突然やってくる。ただ現れ、ただ流れ落ち、ただ吹き荒ぶような瞬間の連続がやってくる。

正直、あまりに甘い考えだったのかもしれない。それがあまりに簡単で、適応的だったからといって、それの自立性が容易に揺らぐわけがない。

ある種の甘さ、寛容さは、別の側面から捉えればある種の堅牢さであり、自信の現れなのだ。

BPM130で踊ろうと友達がいう。踊っても問題は解決されないし、事態を後回しにするだけなように思える。けれど、自分にはそれが必要なのだろう。

踊ることで身体感覚が鋭敏になり、自己に対して自覚的になる。視覚の観点からは、他者が同様に踊り狂っている様をみて、正常や異常、安全や危険といった単純な二項対立がいとも簡単に壊れてしまう、機能を無効化してしまうことを認識するだろう。

結局のところ(あるいは、つまるところという表現を使ってもよい)それがもたらす磁力に対して抗うことが最も適当であるのか、それとも共鳴することが適当なのか、といったことについて僕らは悩みくれているのだ。

「くたびれた」と彼女はいう。思考することに?あるいは、踊ることに対して?

しかし、夜は流れる。そのとき彼女は何というだろう?僕は実際的な課題についていかに説明できるだろう。

いつだって今ここだけが、本当の意味で正しく、厳然たる事実なのだ。いつかどこかは、きっと存在しないし、それはずっとMatters of Concernであり続けるだろう。

ただただ流れていく時間や、ただただ正確に各駅に停車していく鉄道と、サイレンを鳴らし続ける緊急車両、灯りのつかない信号は全く異なるものだ。正常と異常という差異。しかし、正常も異常であり、異常も正常であるのかもしれない。

「結局の問題は、」と彼女はいう。続けて彼女は「事実と仮定、正常と異常といったものが瓦解してしまっていることだと思う。それは0と1の壊滅的な混同だし、海と陸が一体化するくらい強烈なことな気がする。」と口早にいう。

まるでことのすべてを知り尽くしているかのように。