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Prune.

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「星野源」という現代の希望: なぜ星野源はこれほどまでに愛されるのか

最近星野源こと、源ちゃんのエッセイ2冊を立て続けに読んだ。もちろん源ちゃんの楽曲はだいぶ前から聴いていたし、そこそこ好きな曲もあったのだけれどエッセイを読もうと思うほどの熱烈なファンではなかったのだ。

それが先日、いつものように本屋さんめぐりをしているときに(これは僕の趣味の一つでもある)ふと気になって手にとってみたのが彼のエッセイ。「そして生活はつづく」だった。

そして生活はつづく (文春文庫)

そして生活はつづく (文春文庫)

 

薄いし値段も安かったので中身をほとんど確認せずに購入。正直それほど期待はしていなかったのだが、これが良い意味で裏切られる。

なんでこんなに面白いの?ミュージシャンだよね、源ちゃんって…。

ミュージシャンだからとタカをくくっていたのかもしれない。文筆家ではないのだからそんなに面白い文章は書かれていないだろう、と。でも彼はシンガーソングライターだ。歌詞を書いている。よくよく考えれば文筆家なのだ。

それが理由かは定かではないが、本当に面白くて読んでいる間中笑いが止まらなかった。1万円もする高級箸を買ってしまった話だとか、とんでもないタイミングで襲われる羞恥極まりない腹痛の話、口内炎治らなくて痛いよ的な話、そして幾度となく繰り返される下ネタ…笑

どれもくだらないと言ってしまえばくだらない。というか、だいたい全部くだらない(笑) しかし、そういうくだらなさがエッセイの魅力なのだと僕はこのとき痛感した。

心を揺り動かされるようなアドベンチャーや恋愛の物語、世界を舞台に繰り広げられる壮大な物語が読みたいときもある。でもエッセイはそんな類では決してない。作者の日常にあるありふれた物語が綴られるのがエッセイだ。

どんなに有名な芸能人でもアーティストでも、結局は一人の生身の人間だ。僕らが日頃経験するようなバカバカしくてしょうがないようなこともたくさん起こる。そんなことを面白おかしく書いているエッセイは本当に愛おしくて、楽しくて、何といっても素敵なのだ。

そんな素晴らしいエッセイだった、星野源の「そして生活はつづく」。

あまりに面白かったので、早速Amazonで新しい作品である「蘇える変態」の方も買ってみた。何とも奇抜なタイトルだが、インパクトがあることに疑いようはない。

蘇える変態

蘇える変態

 

そしてこちらも相変わらずの素晴らしい出来。前半が「そして生活はつづく」と同様に日常の話、そして後半では彼が経験した病との闘病日記が書かれている。ただ闘病日記と言っても一般に予想するような重苦しいものではない。ただ、明るく書かれた文面を読んでも相当苦しかったし辛かったのだろうと容易に想像できる。しかし、それを面白おかしく、そして相変わらずの下ネタを交えて書く源ちゃん。その才能に脱帽だ。

そしてこの2冊を読み終えたのちに彼のつくった楽曲を聴いてみた。

 

うん、違う。今までと明らかに違うように聴こえてくる。本当に。

 

彼が本当に辛くて辛くて我が身を投げ出したかったほどであろう闘病生活を終え、苦しみを味わい尽くした人間がつくった音楽。そんなことを考えるだけでギターの音も、彼の声も、ピアノの音もまったく違って聴こえてくる。

歌詞だってそうだ。その痛みを知っている人間だからこそ書ける歌詞。そういうものはきっとあると思う。もちろん彼はそれを面白おかしく書いたりする人だから、そこに悲痛さや悲壮感はない。でもその苦しみを超えた先の突き抜けた美しさや素晴らしさが彼の曲にはあると強く思う。

そして、僕はこの2冊を読み終えた頃には「星野源」という一人の男をすごく尊敬していた。僕が思うに、彼の最大の魅力はその飾らなさと正直さなのではないだろうか。下ネタもガンガン言う。恥ずかしくて隠したいようなことでさえ、エッセイで赤裸々に綴っている。

今世の中の多くの人たちは僕自身を含め、自分をより良く見せよう、自分をブランディングしようと必死だ。インスタ(Instagram)に投稿するためだけにインスタ映えするスポットに出掛けて写真を撮りまくる人までいる。就活ではマニュアル化された受け答えが見透かされ、よりオリジナリティを持った差別化された答えが要求されている。留学、学生団体、インターン…様々な言葉が踊る世の中だ。

そんな中で彼は何も隠そうとしていない。自分の恥ずかしいところや触れられたくないところまで臆することなく曝け出している。彼は裸一貫の表現者のようなものだ。

そんな彼の姿勢を見ていると自分をいかによく見せるか(魅せるか)に躍起になっている多くの人たちは彼に憧れを抱くのだ。そんな彼の素直さをみんなが肯定して、飾らないで生きられる世の中が来たらどれだけみんなにとって幸せだろう。そんなことを源ちゃんを見ていると感じてしまうのだ。ちょっと話が大きくなってきてしまったけれど。ちょっと拡大しすぎじゃないか、おい!って言われそうだけど。まあまあそこは大目に見て欲しい。

つまるところ星野源は「現代の希望」なのだ。今逃げ恥のドラマでも彼は大人気。音楽も人気絶頂だし、ファンもたくさんいる。なぜ彼がこれほどまでに愛されるのか。理由は上の説明を読めば自ずと分かるだろう。

君の名は希望」という曲が乃木坂にあったが「星野源は希望」と言っても差し支えないのではないか。

生きづらい世の中で星野源は、今日も僕らのかすみがちな明日を照らしてくれることだろう。

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